1988年のソロ・アルバム"Silk City"以来のバリー・ミッターホフの新作は，彼のソロ・アルバムのタイトルをバンド名に置き換え，しかもギターにダニー・ワイス，ベースにラリー・コーエンを配したスカイラインのリズム隊による新バンドのデヴュー作として発表された。
　もっとも，バリーは1989年のスカイライン解散後からワイス，コーエンにヴァイオリンのマーティ・ラスターを加えたシルク・シティ・カルテットとして活動を続けていた。
　また一方，彼はクレツマーのWest End KlezmorimやクラッシックのAbaca String Bandのメンバーとして，レコーディングやステージ活動を行い，彼が培ってきた幅広いマンドリン音楽への関心を具現化してきた。
　このアルバムは，スカイライン解散後，満を持して発表されたバリーの音楽の集大成とも言える作品である。

　ゲストのトニー・トリシュカ，デーデ・ワイランドの参加曲はスカイラインのリユニオンであるが，回顧的な意味合いではなく，十分に今日的な演奏であることに，その高い演奏力・センスの良いアレンジ力おいて，スカイラインが他の追従を許さなかった当時の先駆的なバンドであったことを，再認識させられる。
　その徹底して都会的に磨き上げられたブルーグラス・サウンドは，またバリー・ミッターホフの持ち味になっているし，彼がソロ・アルバムで見せたクラッシク，ジャズなどへの関心も，彼のマンドリン・プレイの中で熟している。それらのミクスチュアを演奏できるユニットは，やはり気心の知れた元スカイラインのメンバー達だったのだろう。

　アルバム全体がバリーの音楽性に彩られているとは言え，ダニ―・ワイスの伸びる歌声はスカイラインのサウンドを特徴付ける大きな要素であったことを改めて感じさせるし，ラリー・コーエンの適格なベースと漂うインテリジェンスもまた同じことが言えよう。
　ヴォーカル曲とインスト曲が交互に並べられ，歌はダニーのブルーグラス色のないクリーンな歌声と，それを支えるアンサンブルの巧みさが光る。インストでは，バリーの幅広い音楽への関心がバンドサウンドと一体となり，華麗な演奏を繰り広げている。トリシュカの入った曲は特にスカイライン色が濃厚であるが，この3人のリズム隊のスカイライン・サウンドへの貢献度の大きさにあらためて気づかされる。

　"Late to Work"から"Fire of Grace"まで4枚のアルバムを発表し，1980年代を疾走したスカイラインの再評価にもつながる"Silk City"のデヴュー作である。